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DD20形 補助機関車 | |
基本構想 |
簡単に入手できる低価格の材料で,走行性能がよく汎用性のある機関車を自作する。・・・・・欲張った目標です。 |
<その1> 急カーブでも曲がれる機関車を作る
機関車の製作時間は膨大で私の場合,完成させるまでに年単位の時間を要します。機関車を増備したいと思っても並大抵ではありません。
(1)
車軸の両端に車輪を固定した輪軸はスリップしない限り直進します。
(2) 固定2軸車を手で動かしてみると,一定以上の軸距(=車軸間の距離)を超えると著しくカーブが曲がり難くなります。
(3)
急カーブではフランジがレールを強く擦り脱輪にもつながります。カーブを安全に曲がれる車輪が必要です。
上にあげた(1)〜(3)を考慮して,急カーブ対応型のバッテリー機関車のプランを纏めてみました。(右上図) |
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<その2> モーターのトルク | |
機関車の牽引力はモーターのトルク(回転力)と車輪が空転しない粘着重量(動輪にかかる重量/鉄道用語)の双方に関係しますから,まず粘着重量から決まる最大牽引力を調べておきます。
この 49 N
の値を基に出力(トルクと回転数)がどの程度のモーターを使用すればよいのか検討します。
(必要なトルク)DD20形用に製作した動輪の半径は r=36mmでギヤの減速比を仮に Nw/Nm=1/5
とした場合,モーターのトルクは
Tm=49×36×10-3÷5≒0.353 Nm の大きさがあればよいことになります。 |
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<その3> モーターの回転数 | |
最高速度時 (モーターは低トルク・高速回転)
(必要な回転数) 動輪半径を
r=36mm,ギヤの減速比が Nw/Nm=1/5
の機関車を最高速度 v=1.7m/sで走らせるとすると,モーターの回転数は
Nm=5×1.7÷(2×3.14×36×10-3) ≒3.76 回/s=2.26×103r/min
〔速度の換算式〕
V=30.2×v≒30v v=0.0331×V≒V/30
(例)上記の5インチゲージの v=1.7m/s は,実車に換算すると |
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<その4> モーターの制御とブレーキ | |
速度の調節 速度調節は,リレーとPWM(パルス幅変調)の回路で「遠隔操作」するのが一般的なようですが,機関車の上に直接乗って運転する構造なので昔からある最も単純な構造にすることが可能です。2台のモーターをスイッチの開閉で直並列制御(鉄道用語)し,電気的なブレーキにも使います。(注2)
発電ブレーキ |
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<その5> 速度優先か,牽引力重視か(ギヤ比) | |
最適な条件のモーターを入手することは困難なので,車輌の駆動力(トルク)と速度(回転数)とのバランスはギヤの減速比(=モーターの回転数と車輪の回転数の比)で調整します。
(ギヤ比の試算)
動輪半径が r=36mm,最高速度を v=1.7 m/s
,モーターの定格回転数が
2400 r/min の場合,減速比k は
k=9.55×103×1.7÷(36×2400)=0.19 (減速比≒1:5) とすればよいことになります。 |
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<その6> 回転力の伝達 | |
モーターの回転は4枚の平歯車によって回転数を1/5(上記試算の値)に減らし差動機に伝えます。差動機は傘歯車(ベベルギャ),車輪間はチェーンで回転が伝えられます。
車輪間の回転力の伝動 |
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<その7> 機関車の出力 | |
電気機関車の出力はモーターの仕事率(=単位時間にする仕事)で決まります。しかし,モーターの仕事率は電流や負荷によって変化するので一定値にはなりません。安定した性能をもつ機関車にするために異なる角度から出力について検討してみることにしました。 |
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(注1)車輪とレール間の運動摩擦係数は双方の形状や材質,油や水の有無などにより一定しませんが,渡辺誠一著「ライブスチーム」誠文堂新光社,によれば「約1/5と見てよく・・・」とあり ,この値を使わせていただきました。 (注2)ブラックボックスの部分が多い と「作る」という実感が希薄になります。エンジン模型よりはライブスチーム,ICラジオよりは鉱石ラジオという風に,「昔の技術」=原理を実感することができる技術には捨てがたい魅力があり,原理そのままのシンプルな構造は「自作」に向いていると思います。
(注3)直流モーターの回転子(コイル)は磁界中を回るので回転子には(逆)起電力が発生します。始動時は回転が遅いのでこの(逆)起電力も小さく,電源からの大電流がモーターを流れ大きな回転力(トルク)が得られます。回転が速くなると(逆)起電力も大きくなるので電源からの電流が減少して回転力は小さくなります。 |
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DD20形補助機関車 基本構想 |
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