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SSシリーズ欧州形 蒸気機関車

 9  ボイラーU

石炭を焚き煙をあげて走るとき小粒の「山椒」(=SSシリーズの別名)も名実共に蒸気機関車の仲間入りをします。石炭焚きは大変な手間を要しますがライブスチームのこだわりです。
かまど(竈)の構造

石炭で走ることが蒸気機関車を第 1線から退かせる一因となりましたが,模型鉄道の機関車としては電気や液体燃料の機関車では得られない大きな魅力をもっています。

石炭を燃やす竈(かまど)の製作には
(1)数百度の高温に耐えること
(2)狭い火室内で石炭が安定した燃焼を続けること
(3)走行後,火床や灰箱の掃除が容易に行なえること・・・など,満たすべき条件がいくつかあります。

山椒
(=SSシリーズの機関車)の竈(かまど)の基本構造です。実際に製作するには火室に材料をあてて構造やサイズを決め,細部は自分で工夫しながら作ることになります。
火格子の製作

燃焼時の高温に耐えるため,普通の鉄材よりも耐久性のあるステンレスで作ります。
構造は簡単で長さ95mm,径6mmの棒材7本を使用し,穴をあけた板材に両端を差し込んで抜けないようにカシメます。

87 火格子(火床)
火格子は石炭の下から空気を取り入れて燃焼しやすくするための台なので,4箇所に真鍮棒とステンレス板で作った足をつけて灰箱から1cm位の高さに固定します。

灰受けの製作

内火室の底の 横幅は灰箱より広いので底の形に合わせた枠をはめて,火室内の石炭屑や燃え殻を内側に集めて灰箱に落とすために取り付けます。

8
8 灰受け(下面側)
厚さ0.6mmの真鍮板を曲げてアングルを作り4隅をリベットで留めます。この灰受けは台車枠に固定します。

灰箱の製作

真鍮板をリベット(一部はネジ止め)で組み立てて作ります。運転終了後,底に落ちた石炭屑や灰を捨てるために灰箱は留め金を外すと灰箱と火格子全体が台車枠の間を下方に回転し,灰掻き出し口の蓋も開くように作ります。

89
灰箱 (アシュパン)  90 留め金(部品6に取付け後,組立)
灰箱はボイラー真下の清掃・整備が困難な場所にあるので灰箱と火格子をユニットにして機関車本体から取外せると便利です。
ネジを数本外すとこのユニットが取り出せるようにしてみました。時々は大掃除も出来ます。
かまど(竈)の取付け

台車枠部品番号-1 に灰受け88 をネジで固定しました。運転室の床54 とほぼ同じ高さになります。

石炭を燃やす火格子87 は灰受け88 の上1cm位に,灰箱89 は真下にセットされて,灰受けの長方形の枠の上に内火室の底が収まります。


(写真) 留め金90 のレバーを回すと火格子87 と灰箱89 とは台車枠 1 の間に落ち込み石炭屑や灰が除去できます。
煙室と煙突 (通風器の構造) *1

一般的に炉やかまどには煙突を付け,煙突内の上昇気流を利用して燃焼を助けます。一方,蒸気機関車には高い煙突が付けられないので,エンジンの排気と通風弁から送られる余剰の蒸気を利用して煙突にかわる作用をさせます。

模型サイズの小さな煙突では煙突が付いていない状態とまったく同じで,無理に見た目だけの煙突から排煙させようとしても燃焼ガスが火室に充満して しまって燃焼を妨げます。

そこで模型機関車にも実物と同じような通風機構が必要になります。簡単な構造ですが,通風器によって排煙し火室内に新鮮な空気を供給します。
煙室の製作

機関車先頭部の煙室は「ただの空洞」のようにみえますが,火室内に新鮮な空気を補給する通風器の役割があります。そのため,煙室は気密性にも考慮して製作 します。

91 煙室胴 厚さ5mmの真鍮板で底部の付き合わせ部分は真鍮板を当てて銀ロウ付けをします。

92 煙室前板  旋盤加工済みの真鍮鋳物に煙室胴,煙室扉,煙室
扉ロックバーを取り付けるためのネジ穴加工やネジの銀ロウ付けをしました。(注:前板のランプ掛けはリベット付けなので外してありません。)

93 煙室扉ロックバー 真鍮鋳物を加工します。 煙室戸を密着させて閉じるためにネジを使ったので,ナットは将棋の駒形のポケットに入れます。ネジ(=ハンドル)を締めたとき不自然な位置でハンドルが止まるのを避ける為で,ポケットに入れるナットの位置を60°ずつ変えることによって調整します。

94 煙室胴底当て板  煙室胴の底には給・排気管を通す切り込みがあり,気密性を保つためにこの切 り込みを塞ぐ板を取り付けました。
この板は給・排気管を左右から挟むように2分割し,煙室サドルにネジ留めしています。
煙室からの排煙量
単位時間に煙突から放出される気体の体積A
 A=煙突の断面積
S×煙突を通過する排出ガスの速さv
一方,エンジンからの水蒸気排出量Bとして AB  ならば燃焼ガスの排煙量C
 C
=AB
(≒火床への通風量)となります。
そこで,吐出蒸気を細い吐出口から断面積Sいっぱいに噴出させ,排煙効果を高めるように利用します。
もし AB
になると火室内に排出蒸気が侵入し逆効果です。吐出口の径と煙突に対する位置がvに関係するので,この部分の調整と煙室の気密性を高めて排煙(=火室への空気の吸い込み)をよくします。


,上記Aの値を簡単に求めることは出来ませんがBは分かります。蒸気圧を0
.6Mpとし,1m/sで走らせた場合(実車50Km/hに相当) には B≒10.5ml/s となります。
煙突の製作
真鍮パイプと鋳物部品のやすりがけで作ります。煙突パイプの下部1/3位は煙室内に入りますが,この長さは煙突スカートの位置を移動させて通風状況を見ながら決めます。

95 煙突パイプ  96 煙突キャップ  97 煙突スカート
 
煙室扉の製作

煙室内は石炭ストーブと同じで掃除用の扉が必要です。この扉は煙室内の気密性を保つ上からロックバー93を使った開口部の広い実際の蒸気機関車に似た構造です。

扉は鋳物で旋盤加工済み,蝶番,煙室扉ハンドルなど細かい部分は生材から作ります。

98 煙室扉 99 煙室扉蝶番(部品数/5点)
100 煙室扉ハンドル(丸ハンドルの材料は洗濯 から戻ってきた衣服を吊るしていたハンガーの針金です。)
通風器の製作

通風器弁82から送られた蒸気は通風器パイプから吐出します。 排気管の吐出口は径3mmの銅パイプの先端を内径1mm程度に絞 ってあります。吐出ノズルは煙突下の最適な位置を調べ,金具で固定します。

101 通風器パイプ  102 通風器取付け金具(ステンレス板を加工)
煙室胴 91 に煙突や煙室戸などの部品 92102 を取り付けて組み立てた状態です。

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