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電気エネルギーの発生

(1) 太陽の放射エネルギー量

太陽から送られてくる放射エネルギー(可視光線を中心とする様々な波長のエネルギー)を地表で受け ,このエネルギーを電気エネルギーに変換します。どの程度のエネルギーが得られるのか先ず調べてみました。

太陽定数(太陽光線に垂直な地球の大気圏外の単位面積が受けるエネルギー量)は1m2の面積に毎秒,,1370J(ジュール)=1.37×103 W/m2です。このエネルギーが大気による吸収,反射,散乱などによって減少し,直達日射量(太陽光線に垂直な地表の単位面積が受けるエネルギー量)としては700W/m2 程度になるようです。

子供の頃に習い,今でも覚えていますが「1分間あたり,1cm四方に2calの熱(正確にはエネルギーですが・・・)が来る。」と言って日向ぼっこをしていました。 この値なら 1.40
×103(=2×4.19×104÷60)W/m2になります。
実際の日射量は自然条件によって変わる値なので日照時でも 500〜1000W/m2 程度の巾があり,ここでは 700W/m2を直達日射量としてエネルギーの計算をすることにしました。(ソーラー パネルの性能を比較するときは,1000W/m2のエネルギーに対する発電量とするようです。)


変換効率 様々な波長の放射がソーラーパネルに達します。すべてが電気エネルギーに変換できるわけではなく,パネルの薄膜組成や表面処理が変換に影響するようで特性は様々です。
太陽の放射エネルギーをパネルが電気エネルギーに変える変換効率を調べてみました。変換効率の良いものも研究が進んでいるようですが,市販されている通常のパネルは20%以下 が多いようです。

数社の製品の仕様を調べてみました。変換効率の記載がないものもあり,公称最高出力の値で変換効率を比較することにしました。
購入を予定している12V,80W〜150Wの独立型パネルはいずれも17〜19%の変換効率になり,価格差があっても効率の差はほとんどありません。
ソーラーパネルの特性は高温になると出力が低下したり,放射照度によっても発電量が変わります。
更にパネルの取付方角や角度が発電量に関係し,設置後の汚染や劣化まで含めると変換効率を云々することにあまり意味が無いような気もしてきました。


変換効率が良いと謳っているパネルは価格が高く,小規模な使用の場合は変換効率が悪くてもパネルの設置面積を少し広くすれば済むことなので,低変換効率=低価格のパネルでソーラーシステムを作ることにしました。

(数値1) 目安として,そばな高原鉄道「太陽光発電所」の最大出力は(毎秒,パネル1m2 あたり)
      700W/m2×0.19=133W/m2 になります。    (上図参照)

 

(2) 発電量に影響する2つの因子

「太陽光発電所」の最大出力はパネル1m2 あたり毎秒133W  程度になることが分かりましたが,実際の出力は日射の状況によって変わります。平均してどの程度の発電量が期待できるのか大まかに推定してみることにしました。

自分で 立てた「仮説」で予測し,実際と付き合わせてみるのも面白いと思います。以下はすべて自己流の考えです。
的外れであったり重要な点が欠落しているかも知れません。設置後,発電条件と発電量の関係を調べるつもりで,その準備としてこんな「筋道」で考えてみてはどうか・・・という程度のものです。

発電量に最も影響するのが天候です。天候という不確定要素が毎秒の発電量を 0〜133 W/m2(最大値)の間で変動させます。(因子1)

別の要素として,周期的に変動する太陽の動き(日周運動,年周運動)があります。パネルに届く放射エネルギー,放射照度は太陽の高度や方角によって変わります。また,夏と冬の昼の長さの差は4時間半以上(東京の場合)あります。(因子2)

これ以外にも発電量に関係する要因が考えられますが,概算を求めるだけなので特に影響が大きい上記の2つの因子に絞りました。

因子1

 晴天日数

1年間の天気を予測することは困難ですが,10年,20年という長い期間になると天気の傾向はある値に収斂していきます。年による変動は無視することにして,発電できる日照時間を過去の平均値から算出することにしました。

何年前か忘れましたが夏の1カ月以上,雨や曇天が続き,米が凶作になった年がありました。天候は他の自然現象に較べてバラツキが大きいのが特徴だと思います。

気象庁のwebサイトにある気象統計を見ると,ある地点,ある期間の日照時間が分かります。
2010年の東京の1月と8月の日照時間はほぼ同じ230時間()でこの2ヵ月が年間を通して最大の月でした。夏と冬は照度が違いますから同じ発電量にはなりません。また,「晴れ」と「快晴」では発電量が異なります。正確に調べるには晴れと快晴も区別する必要があるかも知れません。

(数値2) 天気は不確定な要素ではありますが,晴れ間がどの程度か,1日あたりの日照時間を「決めてしまう」ことにしました。
東京の過去10年間の日照時間の平均は 1881h/year (気象庁データ)になることが分かりました。この値を365日に均すと, 1日の日照時間は
       1881h/year÷365day/yea=5.2h/day となります。

「晴れ」と「快晴」の相違,季節による放射照度の変化などがあるので,日照時間と発電量とは比例しません。そこで,「晴れ」も「快晴」も季節による照度変化も区別せず,同等に「晴れの時間」として取り扱うための係数を導入しました。係数を 0.8(注1)と仮に決めて補正すると
       5.2h/day×0.8=4.2h/day  となります。
この値をこれからの計算に使う,「1日の晴れの時間」とします。

(注1) この係数をもちだしたのは,東京の1月と8月の日射時間が同じ230時間(上記,気象庁データ)位になることを調べた上で,1月の発電量が夏の6割近くまでに落ちることをグラフ(NEDO=産総研のサイト)で見たからです。また,感覚的ですが春・秋では薄曇りに近い「晴れ」の日には日射しの強度が夏の1〜3割位,低下する様な気がします。ただし, 夏の高温は発電量を減らす要素もあるようです。これらを総合して,かなり大雑把ですが 0.8 としました。少なくとも0.9や0.5ではないとの憶測です。

一方,「 曇天」や「雨天」でも太陽光パネルは発電し,「晴れの時間」だけで発電量を算出したのでは正しい値が得られません。太陽が隠れている時の発電量を「晴れの時間」に加えることにしました。(右図 ,晴天,曇天,雨天時のパターン例)

平均の日照時間は日照時間から概算で算出すると
     12−5.2=6.8h/day になります。
日照時間における発電量は補正値を 0.2(注2)として「晴れの時間」に換算し直すと,
    6.8h/day×0.8×0.2=1.1h/day となります。

(注2) 天候の違いによるエネルギー量(発電量)が右図のようになるとすればこの程度かなと仮定した値が 0.2です。この値が0.4や0.1にはな らない無いと思いますが,根拠は希薄です。 最終的には長期に測定して値が決まればよいのですが・・・。曇りと雨との割合や曇りの程度がこの値に大きく関係すると思います。

結局,「1日の晴れの時間」は曇りや雨でも「晴れに相当する時間」があることから
     
4.2+1.1=5.3h/day  に増やしました。

因子2

 太陽の日周運動と年周運動

(年周運動)太陽の南中高度は季節で変わり,北緯35度(東京)では31度(冬至)から78度(夏至)の間になります。
そのため,パネルの傾角を固定するとロスがでますが,通常はパネルを真南に向け,傾角を固定します。発電量と傾角の関係を実測した結果のグラフを見ると,32度(35度ではなく,少し小さい)位になるようです。
そばな高原鉄道の場合は季節による南中高度の変化に合わせてパネルの傾角を変えて発電効率を アップする方法をとります。

(日周運動)パネルを南に向けて固定する影響と,朝晩は太陽の高度が低く大気圏の通過距離が長くなることもあって,パネルへの日射量は極端に減り朝晩の発電量は少なくなります。

ただ,曇天でも発電できることから太陽から直進してくる放射だけでなく,薄明かり(別の方向からの散乱光)でも発電していることが分かります。
薄明かりとなると,太陽高度や受光面積の変化から発電量を計算するのは無理で,実測しかないと思います。


(数値3) 日周運動や年周運動による発電量の変化は太陽の高度や照度,その他の要素が関係し複雑です。実測値に基づいて平均化した値を計算に使う方が簡単で合理的です。

晴天の1日の発電量を実測したグラフをサイト上で見つけました。そのグラフを参考に 最大日射量(=発電量)を1として描いたのが右図です。
1日の総発電量は赤の曲線と横軸の間の面積として求められます。(右図について,実際に面積を求めると8.16 になりました。)

その日の日照が朝・昼・晩のいずれであるかによって発電量が変わるので,平均化しておくと,サーモンピンクの長方形に置き換えられます。
右図,」斜線部分の面積 8.16=長方形の面積0.68×12
(注:もし,赤線がsin波形 の一部ならば,0.68ではなく0.71になります。)

このように考えることで,朝晩や日中の時刻に関係なく,「晴れの時間」であれば,そのときの発電量(=平均の発電量)は最大発電量の0.68倍の大きさになると計算することが可能になります。
「晴れ間の時間」が午前なのか,午後なのか,1日に何回あるのか分かりませんので,晴れの時間(=5.3h/day)を均等に振り分ける操作 が必要で,この長方形への置き換えをしました。

この係数 0.68で単位面積あたりのパネルの1日の出力を計算してみますと
        133W/m2×0.68×5.3h/day×602s/h=1.73×106J/m2・day

この値は体重60kgの人が28kgの荷物を背負って,1日かかって標高差2000mを登るエネルギーに相当します。
(※計算 88kg×9.8m/s2×2000m/day=1.72×106J/day)
たった1m2のパネルのはたらきですから,太陽エネルギーは驚くべきパワーを秘めています。


また,1年間の総発電量は
     0.133kW/m2×0.68×5.3h/day×365day/year=175kWh/m2・year  と予想しました。

注:回路の電気抵抗や途中機器での損失もあり, 実際に使える消費電力はこの値より少なくなります。

 

(3) 太陽光パネルの選定と設置

パネルの大きさ(出力) 1年間の平均で,単位面積のパネルが1日に発電する電気量は上記の計算方法でよいとすれば(数値1,2,3より)
      133kW/m2×0.68×5.3h/day=479Wh/m2・day となります。
エネルギーロスを無視すると消費電力20Wの器具なら24時間,100Wの器具なら4時間47分はたらく電気量です。

この値をもとにして購入するパネルを検討しました。パネルの大きさ(出力)を決める際に重視したのは次の3点です。
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1 予算総額 ソーラーパネル以外にバッテリー,チャージコントローラーを含めた総額からパネルの金額を決めます。パネルの出力が大きくなれば,他の機材も高額になります。同レベルの出力でも製品をうまく組み合わせると総額を安くすることができます。
予算の配分比率は パネル:コントローラー:バッテリー=3:1:1 にすることにしました。バッテリーは別に模型鉄道用のものも充電します。

2 設置場所  ソーラーパネルの出力は大きくないと実用にならないと思います。設置するスペースと設置方法によって,パネルの大きさと形に制約がありますが場所に余裕があるなら1ランク上の出力が得られるパネルにします。
(注:パネル出力とバッテリーの容量は関係しますから,バッテリーも大きくします。)


3 発電能力 1日当たりの予定消費電力だけでなく,充電に回せる電力の2面からパネルの出力を決めることにします。そうでなければ,変動幅の大きい自然現象に対応できないと思います。
発電量が低下する冬や梅雨時でも備蓄に回す電力が確保できるように余裕のある出力にします。
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これらの条件から,「太陽光発電所」では設置場所の条件さえ満たすならパネルは大きなもの程よいに決まっていると考えました。(出力の大きなパネルはWあたりの設備単価を2/3から1/2程度にするので,経済的でもあります。)
すべてが「お天気次第」なので発電量のバラツキは極端です。計画通りに発電量が推移する保証はどこにもありません。数日間の無日射に備えた蓄電量では季節によっては頻繁に電力不足になることが計算上から出てきます。
短時間の晴れ間があればその間に大量に発電し,快晴続きで余裕が生じれば予備のバッテリー(模型用も含む)に蓄電したり,家庭用機器に回す割合を多くするなどの対策をとります。家庭用の用途さえ準備しておけば価格が高い発電システムが過剰設備になることはないとの考えです。

家庭用に回す電力は一種の「貯金」です。後日,旋盤等の電力として「そばな高原鉄道」は交流(商用電力)の形で「払い戻し」を受けます。 実際には電気配線が無く家屋内限定の「系統連系型ソーラーシステム」をイメージしています。
ただ,家庭用に余剰電力を回すシステムでは実用上,雨天が数日続いたらダウンでは使い物になりません。基本的には10日以上の曇天でも持ちこたえるシステムに したいところです。 普段はバッテリーを浅い「放電深度」で使いながら,将来のシステム拡張に対応できる高出力のパネルにします。

設置場所 ソーラーパネルの設置場所は屋根の上が条件的に良いのですが,取り付けるのが大変なのと今回は試験的な目的もあるのでベランダの南東隅に取付けました。畳をひとまわり小さくした形ですが手摺の外に半分程度はみ出すとそれ程場所をとりません。
ベランダに設置するとパネルの向きや傾角を変更したり,パネル表面を半透明の膜で覆って照度を変えたり,パネルの表面温度も調べられます。

設置方法 ソーラーパネルは複数のセルを並べたモジュールをアルミ枠に取付けた構造です。アルミ枠自体にもある程度の強度があります。ソーラーパネルの向きや傾きを変えることと,強風にも耐えられるようにアルミ枠に更に木枠も取付けました。この木枠をベランダの手摺に固定します。
ソーラーパネルからの配線はチャージコントローラーまで約25m,電圧降下が少ないケーブルを伸ばしました。

 

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