トンネル内の軌道

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そばな高原鉄道のトンネルは天井が低く,トンネル通過時には頭を擦らないように注意する必要があります。この状態を緩和するために薄型で凹面の路盤に合わせた形の軌道を作りました。

軌道の設計

トンネル内の軌道設計で重視したのは,次の4点です。

(1)水の滲み出しと凍結に耐える構造にする。モルタル,コンクリートは水が溜まると壊れます。
(2)軌道面を極力低くする。天井が低いので乗客が頭を擦らないようにします。
(3)メンテナンスが要らない軌道にする。狭いトンネル内は作業が大変です。
(4)音の響も含めて,出来るだけ実感的な軌道にする。
設置後も改良が必要です。

軌道の形

トンネル内のレールは全体的には半径40m程度の円軌道です。ただ,一部に半径15mの部分もあり一定していません。
ヒューム管を並べたトンネルは円形ではなく多角形になります。接続部には角が出来ますがごく僅かです。

暗闇の中でライトに照らされて光るレールは滑らかな曲線を描いてこそレールであり,鉄道の美の典型です。この曲線の決め方は私と鉄道模型>
隧道内の線路に記しました。

道床と枕木

軌きょうを載せる路盤はヒューム管を利用しているので平面ではなく,円筒面(の内面)になっています。 円筒内面に弓形に湾曲した曲線軌きょうを直接載せることは出来ませんから,まず,これを解決しなければなりません。

ヒューム管の底にモルタルで水平な路盤を作れる場合ば簡単です。しかし,この方法はレール面が高く
なることと凍結すると剥離するおそれもあるので採用できません。

この問題に対処するために下図のような道床(=土台)を考えてみました。
アクリル板を使い,上下2段構造の台板A,Bを組み合わせて軌きょうを水平に保ちます。
アクリル板の代わりに合板を使用すれば価格的には1/10程度ですがカビの発生や腐朽の点に問題があり,強度,防水,耐久性などに優れたアクリル板にしました。
(説明)枕木板の裏には板よりひとまわり小さな長方形のアクリル板Aが取り付けてあります。このアクリル板Aの下にアクリル板Bを入れ,abcと線a’,b’,c’が一致する位置で固定します。
円形の軌きょうを直線状のアクリル板Bに重ねるわけですから,軌きょうの中心線とアクリル板Bの中心線は一致せず,上の断面図の様に相対的に左右に振れます。この 振れがあっても,A,Bの幅と高さを適正に決めますと,レール面を低く水平に保った状態で軌道が設置できます。
 

軌道の製作

全長17.5mのトンネルうち,15mの区間を<トンネル仕様>の軌道にし,出入口(坑門 )から1.25mまでは<標準仕様>の軌道です。トンネルの外からよく見える区間は見かけ と風雨(雪)の吹き込みを考慮して標準仕様にしました。

トンネル内の状況は季節,気象条件で変化します。乾湿状態をチェックしながら材料と形を絞り込みましたので実際の製作では紆余曲折がありました。以下は,回り道 した部分を省いて要点のみを整理してご紹介します。
(1) トンネル内の基準
ヒューム管の軸の位置を測定
円筒の管内に潜りこんで頭を下げた姿勢は水平,鉛直の感覚を鈍らせます。そこで,軌道設置の基準になるヒューム管の軸位置を調べておくことが大切です。
<製作メモ>長さ120cm弱の水平な棒の中心点に「下げ振り」を付け,軸の位置を管底にマークしました。軸位置を確認せずに目測で製作して作り直しの失敗もしました。
ボルトの設置
軸位置から内軌側20cmの底面に軌きょう固定用のボルトを埋め込みました。
固定用ボルトですが初めに取付けておくと製作中にも基準(目印)として便利に使ます。
<製作メモ>長さ8cm,径3/8インチのボルトです。管の接続部(2.5m間隔)にモルタルで固定しました。
(2) 軌きょう
軌きょう
外軌の長さが3mの曲線軌きょうを5組作りました。メンテナンスを軽減することが重要で,強度と安定性を考慮して枕木を棒状ではなく板状にしました。
詳しくは軌きょう(トンネル仕様のページをご覧下さい。
(3) 道 床
アクリル板
壁面の結露,水の滲み出しに備えてアクリル板の道床です。木材の様に水を吸うことがなく薄い板でも強度と耐久性があります。
<製作メモ> ジグソーで5mm厚,畳3枚分のアクリル板を400余枚にカットします。切断する長さが長くジグソーが威力を発揮しました。
写真/白く写っているのは林の空とカットする罫線です。 (念のため)
アクリル板道床のサイズ
アクリル板A,B(上記,設計参照)で構成する道床の断面形状はヒューム管の底面,レールの曲線半径,軌間中心線とヒューム管中心線のずれの大きさ等から決まってきます。
図面と実測値から大体のサイズを決め,最終的には板を管内に置いて現物合わせです。
<製作メモ>アクリル板Bを高さ調整に使いながら,アクリル板Aで枕木を水平に支えるという考え方です。板Aは2枚重ね(厚さ10mm),板Bは1枚(厚さ5mm)で す。
写真
/アクリル板Aを軌きょう裏面に皿ネジで留めました。 板A,Bで高さ15mmになり,枕木が濡れる心配はほとんどありません。
 
敷設工事

  レールの継ぎ目板の位置は3m毎,道床(アクリル板)の接続位置は2.5m毎になるので軌きょうと道床を一体化すると全長15mの構造物になります。
最終の組立はトンネル内に潜り込んで身を屈めての作業です。
 
(4) 道床の取り付け
正しい円弧を描くように軌き ょうを配置します。
次に,アクリル板Bの取り付け位置を現物合わせで決め,枕木の裏面に取り付けました。

<製作メモ> 板Bをヒューム管の軸に正しく合わせればカントは0になります。また,板Bの接続位置と継ぎ目板の位置が異なるので,板Bと軌きょうを一体化すれば継ぎ目板には無理な力がかかりません。
写真/アクリル板Aにアクリル板Bを皿ネジで留めていきます。接続部では「く」の字になります。
(5) 軌きょうの固定
軌きょう全体は一体化されていますからレール方向には動きません。一方,横ずれ は防ぐ必要があります。
ヒューム管の接合部に取り付けた上記(1)のボルトに金具で軌きょうを固定しました。

写真/金具は幅30mm,厚さ3mmのフラットバーで作りました。
 

完成写真

 
外部から差し込む光でレールは光って見えますが枕木など軌きょう全体はほとんど見えません。トンネル内部を照明で明るくしてみました。
写真のように,雨天が続かなければ内部はほぼ乾燥状態が保たれています。

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