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回転整備台/ 回転試験装置
 

駆動状態での整備

小さな模型車輌 の場合,走行に不具合があれば手にとって調べることが出来ます。一方,人が乗れる大型模型の車輌ではそう簡単にはいきません。

特に機関車は軽いものでも30kg以上の重さがありレールから浮かせて保持すること自体が困難です。特に蒸気機関車は車体を横倒しにしたり裏返して整備することは構造的に 不可能です。
機関車の牽引力は動輪の軸重に関係 するため機関車が軽いと牽引力不足になります。これを避けるために軽い機関車はわざわざ重りを積んで重量を増しています。

そこで,機関車はレールに載せた状態で整備することになりますが,不具合箇所を見つけたり整備点検するには動輪を回転させた走行状態でチェックすることも必要です。

実際の走行に近い状況をつくり出し整備する方法としてこの「回転整備台」を製作しました。
回転というのは転車台の様に車体が旋回するのではなく,動輪を回転させる(=走行状態を作り出す )意味の回転です。

最終的には実際に線路上を走行させるにしても,製作場所(室内)ならば走行や整備に必要な器具が揃っており調整も楽なので,機関車の走行条件を様々に変えながらテストをすることが出来ます。
実際の鉄道では検車や試作研究の走行テストに「軌条輪」や「台車回転試験装置」といった名称のものが使われているようで,これらをヒントにしました。

回転整備台の設計

製作する回転整備台は頻繁に使用するものではなく,保管場所も必要になりますから,1セットでどの車輌にも使用できる様に設計しました。

軌間は3インチ半ゲージと5インチゲージ共用とし,軸距鉄道用語:車軸間の距離)は車輌に合わせて任意の長さに変えることが出来る構造です。
この整備台は外径60mm程度の車輪にまで対応できるように,最小の軸距を90mmで設計しました。

とりあえず2軸(B型)から4軸(D型)の駆動軸をもつ車輌に対応できる様に4つのユニットを製作しましたが,追加すればそれ以上の軸数の機関車にも対応できます。

1軸を支える単体(ユニット)の構造  画面は文字サイズ「中」で正しく表示されます

A 深溝玉軸受  B 軸受固定軸  C 鉄アングル
D
鉄アングル
 E 3/8インチ長ねじ F 3/8インチナット

回転整備台の部品(上の設計図の部品番号に対応します。)

部品A
「軌条輪」として深溝玉軸受(型番 6200ZZ)を1軸あたり4個使用しました。外径30mm,幅9mmで,車輪との接触部分には0.6mmの面取りがしてあるので,レール の頭の断面に近い形状です。

部品B
10mmの軟鉄丸棒に4mmの穴をあけ,長さ10mmにカットしました。深溝玉軸受を嵌めたときに横揺れしない精度は確保したいので旋盤加工です。( 右写真)
戸車の車輪のように横揺れもするガタつきあると輪軸部に歪があっても柔軟に吸収してしまうような気がします。
「擬似レール」が車輪に合わせてヒラヒラ横揺れしながら回転したのでは,車輪がレールに正しく適合するかを調べる目的には向かない気がします。

部品C
厚さ3mm,25×25mmの鉄アングルです。長さ90mmに切断機でカットしました。フランジが接触しないように内側アングルの一部を円弧上にカットします。(下写真左)
加工が楽で材料の精度ではアルミの方が良いかもしれませんが,軸重が20kgの機関車が高速走行することを考え丈夫な鉄製としました。

部品D
厚さ3mm,20×20mmの鉄アングルを使用し,3インチ半と5インチゲージに共用する台枠なので長さ196mmにカットしました。(上写真右)
部品CとDとを分解しても正しい長方形に組立てられるように2枚重ねでねじ12本の通し穴を開け,合わせ番号も刻印しました。長ねじを通す9.5mmの穴開けもあり,意外に時間を要しました。

部品E,F
輪軸1軸に1ユニットを使い動輪を回転させる構造ですから,軸距に合わせてユニットを固定するために長ねじ(E)とナット(F)を使います。
実際にはこの長ねじを使って固定する必要がないほど動輪はユニットと一体化して回転し,軸距も自動的に正しい位置に定まってきますのでナットでの固定は省略しても差支えがありません。
心配していたユニットからの動輪の飛び出しもなく,野外の線路上では不可能なスピードに相当する高速回転でも安定した走行状態を保ちます。

回転整備台の組立

(写真上段/左・右)軸距90mm,C型蒸気機関車を載せられる状態にしました。
(写真下段/左)軌間127mmと89mmの変更はベアリングを取り付けたアングルの位置を変えます。
(写真下段/右)輪じくを回転整備台に載せて車輪を手で回しても台から落ちることはありません。

作業時間 約35時間
簡単な加工のB,C,D,を作るだけなので短時間の製作と思いましたが,ユニット4個分となると数が多く,バイスやチャックへの工作物の取り付け取り外しにかなりの時間を要しました。

製作費  合計 約4400円 (1ユニットあたり約1100円)
鉄材 25×25アングル3m 882円 ,20×20アングル3m 842円,3/8インチステンレス長ねじ1m 375円×2本,径10mm軟鉄棒1m 720円 (実際の使用量で比例計算して)約1800円
深溝玉軸受(6200ZZ×16個) 2470円,ねじ類(3×12,4×15,3/8インチナット)約150円

余談(材料価格あれこれ)鉄道模型は極力自作することで経費を節約します。その場合,購入方法と材料の選定で製作費にかなりの差がでます。
上記,深溝玉軸受6200ZZ,16個は2470円で購入しましたが大手のホームセンターの価格では7600円位になります。また,径10mm長さ1mの軟鉄棒が720円,それの隣では径3/8インチ(≒9.5mm),長さ1mのステンレス長ねじが375円で販売されています。 この価格設定は逆で納得し難い価格の付け方です。(製作に一般的でないインチねじを使っているのはこのためです。)
また,上に記したアングルの価格は従来の販売価格で,実際はこの店の閉店セールの50%引きで購入し,1ユニットの製作には1000円もかかっていません。

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