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電圧の制御

(1) 太陽電池の特性

「太陽光発電所」では太陽電池モジュールから得られる電力を電池のように独立した電源として利用します。そのためには太陽電池で発生する電圧や電流の特徴,太陽電池の 特性などを調べてみる必要があります。
12V,125W独立型システムの太陽電池モジュールということから,最大出力時の電流,電圧についてはある程度分かります。しかし,実際に使用するときには日射(放射照度)による電圧・電流の変動や消費する器具 に直結すると太陽電池で発生する電圧・電流が変わってきます。太陽電池モジュールの出力をできるだけ効率よくとり出すにはどのようにすればよいかも考えてみました。

電圧と電流

● 太陽電池(pn接合型ダイオード)に可変抵抗Rを接続し,一定の放射照度の光を照射して,太陽電池に発生する電圧と抵抗を流れる電流を調べると右図の形の電流−電圧特性曲線が得られます。
抵抗値をR=∞にしたときの電圧を開放電圧Voc,抵抗R=0のときの電流が短絡電流Iscになります。
購入したモジュールで実際に晴天の日の正午頃,開放電圧を調べてみると20V程度になりました。開放電圧と短絡電流は日射量(放射照度)や気温によって変わるのでモジュールのVocの公称値は気温25℃,放射照度を1000W/m2にしたときの値のようです。

太陽電池の出力(=抵抗で消費される電力:W)は電流−電圧特性曲線から求めることができ,図の面積(W=V×I)になります。この面積が最大になる出力点を動作点Pにすれば,出力が最大になる動作電圧Vmax と動作電流 Imax が分かります。
実際の電気器具には適正な使用電圧があるので出力最大の動作電圧Vmax で機器が使用できるとは限りません。
もし,単純に最大出力をとり出すだけならば R=Vmax÷Imax  の外部抵抗を太陽電池に接続すれば発熱の形になりますが簡単に取り出せます。
もちろん,Rの値は放射照度の変化によって変りますから,Rを固定抵抗にしたのでは常に最大出力は得られません。

● 乾電池などの端子電圧は大電流でなければ内部抵抗の影響が小さく,起電力に近い値でほぼ一定しています。
一方,太陽電池の場合は負荷や放射照度(日射)によって動作点Pが動くため,端子電圧の変動が大きくなります。
太陽電池を安定した電源にするには端子電圧を一定に保つための回路が必要になり,そのときの電圧は最大出力が得られる動作電圧Vmax にすればよいことになります。

● 「太陽光発電所」の着工以前は太陽電池の特性にまで遡って考えたことがなく,「12V太陽電池モジュール」 ≒「12Vの電池」のような感じをもっていました。しかし,モジュールに発生する電圧は負荷次第で0〜開放電圧Vocの幅があります。
12Vの電池と12V太陽電池モジュールとの違いは,大きな抵抗値の負荷を直接接続し微弱電流を流すとき
電池では負荷に12V(=起電力)の電圧がかかり,太陽電池モジュールでは日照時には20V近くの電圧がかります。

12Vモジュールでは電流−電圧特性曲線が急激に曲がる箇所が12V付近にあるので,動作電圧がVmax ≒12〔V〕となり,この付近の電圧でモジュールから大きな出力が得られます。
動作電圧を12〔V〕付近にすると効率が最大になるので12Vモジュールというのではないかと思います。モジュールのVmaxを12〔V〕にしておくメリットはバッテリー等,自動車関連機器の多くが12〔V〕なので利用しやすい電圧だと思います。

放射照度と電流

● 太陽電池の出力は放射照度(日射)に比例するので放射照度が変われば動作電圧Vmax や動作電流 Imax の値も変化するはずです。
放射照度が変わった場合,Vmax≒V=12〔V〕に固定したのでは損失が大きくならないのか,気になったこの点について調べてみました。

(1) この問題を解決したのは,購入した太陽電池のモジュールに付いていた,「規定電圧による放射照度―出力電流」の関係を示したグラフです。(右図)
グラフは直線とみなせるので,出力が「規定電圧」(=12〔V〕?)のとき,    
      (放射照度)
=A×(出力電流)
であることが分かります。

(2) このグラフによらず,一般的に考えてみました。光電池の出力は放射照度に比例するので
      (放射照度)=B×(光電池の出力)=B×(出力電圧×出力電流)
となります。出力電圧が一定ならば,A=B×(出力電圧)として
      (放射照度)=A×(出力電流)
となり,上の(1)と同じ関係が得られます。

出力の電圧を<一定値>=12〔V〕≒Vmaxに固定した場合,日射(放射照度)の大小は電流の強弱となって出力に関係することが分かりました。

12V独立系太陽電池モジュールは,出力を12V前後の電圧(出力最大の動作電圧)でとり出す工夫をすれば光のエネルギーを電気エネルギーに効率よく変換することができ,日射の強弱は電流の大小となって表れます。
細かい出力電圧の調整や配分はチャージコントローラーまかせにします。その場合でもコントローラーのはたらきを知ることは必要なので「太陽光発電所」での電力の取り出し方について考えてみました。

 

(2) PWM/チャージコントローラー

12V独立系太陽電池モジュールの出力が最大になる動作電圧Vmaxは12V付近(上記)なので,これを利用して出力をとりだすチャージコントローラーです。
電圧12V(12V前後の値)の出力はPWM(パルス幅変調)型のDC/DCコンバーター回路で取りだします。
▼この方式は低価格の割に効率がよいらしいので,建設費を節約したい「太陽光発電所」に向いています。

▼玩具に使用する程度ならばチャージコントローラーを省略することもできますが,実用的にはバッテリーの充電と電圧・電流を制御するチャージコントローラーが無いと電力をうまく利用できません。

● チャージコントローラーは太陽電池モジュールで発生した電力を電圧12Vで負荷に供給し,余剰の電力があればバッテリーに充電します。また,夜間等にはバッテリーから負荷への放電を制御します。
(右写真)高原鉄道のチャージコントローラーです。バッテリー で発生するガスの影響を避けるために室内に設置し,発電状況も確認しやすくしました。コントローラー裏面の放熱板はアルミのフライパンの底を丸く切り抜いて廃物利用しています。

● チャージコントローラーの機能はメーカーや機種によって異なりますが,一例として「太陽光発電所」で使用しているチャージコントローラーのはたらきを模式図にしてみました。(左図)

≪主なはたらきの説明≫
モジュールの出力を12Vの定電圧で負荷に供給
余剰電力を最適な電圧16.5V〜12Vに制御しながらバッテリーに充電,満充電終止電圧は14V
モジュールの電圧低下時,バッテリーからモジュールへの逆流電流を遮断
日照が無い時はバッテリーから負荷に電力を供給,過放電を防ぎ低電圧切断電圧11.2V

 

(4)  MPPT型/チャージコントローラー

12V系の太陽電池モジュールに12V系のPWMチャージコントローラーを組み合わせれば,ある程度効率よく出力を取り出すことができます。
▼上記の「12V系の・・・」は表現に困り使ったものでここだけの言い方です。

● このPWM型チャージコントローラーは取り出し電圧を決めてしまうことで構造は簡単になりますが,次の欠点も考えられます。

(1) 非12V系モジュールに12V系のコントローラーを使用した場合,最大電力点Pmaxの動作電圧Vmax が一致しないので,モジュールから高い効率で出力を取り出 せません。

(2) 12V系のモジュールに12V系のコントローラーを使用した場合ても,上図のように放射照度で電流−電圧特性曲線が変わるため,最大出力点Pmaxは放射照度によって動作電圧Vmaxが変化します。動作電圧を固定してあるので放射照度の変化に十分対応できないと思われます。

● より高い効率で出力を取り出す方法としてMPPT (Maximum Power Point Tracking:最大出力点追従)型のチャージコントローラーがあります。
MPPT型チャージコントローラーの効率がよいのは最大電力点Pmax を検出する回路によって,Pmax を追尾しながら,最適な動作電圧Vmax で作動させることのようです。本格的な太陽光発電ではほとんどこのタイプが使用されているようです。
追尾の仕方は開放電圧Vocから動作電圧を徐々に下げていくと動作電流が増して,出力(=動作電圧×動作電流)がピークに達する点として Pmax がみつけられる回路になっているようです。

● モジュールの受ける日射量や負荷は様々に変動をしますが,常に最大電力点Pmax を検出しながらその動作電圧Vmax で作動させることで高い変換効率になります。このMPPTのチャージコントローラーならば開放電圧Vocの異なる幅広いモジュールに対応できることになり汎用性があります。
▼PWM型チャージコントローラーは特定の電圧に固定されるので効率は悪くなります。モジュールとコントローラーの組み合わせと測定日の日射量や放射強度にも影響されるので効率は一概には言えないと思いますが,web上で公開されている 実測値をみると多くが PWM型は70〜85%,MPPT型は80〜95%程度と記されていました。

 

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