そばな高原鉄道軌条の敷設分岐器電気転てつ機(表示中)

 
 鈍端トングレール分岐器

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転轍の機構はデュアルゲージなのでその分だけ複雑になります。3本のトングレールは転轍棒で動かし,可動クロッシングになる1本のレールは回転させて切り替えます。動力源に3Vの小型モーターを使用して転轍機構がレール間に収まるようにしました。
(1) 電気転轍機の設計
大きさと形 そばな高原鉄道は固定レイアウトですが冬の積雪期には電気系統への水の浸入,凍結による破損の心配があり,分岐器はトンネル内に収納します。移動し易いことも条件で転轍機を取り付けるための長い枕木は突出して邪魔になので使用せず,転轍機構はレール間にすべて収めてしまいます。

動力源
 転轍の動力源としては電磁石,モーターの使用を検討しました。電磁石によってリンクされた4本のレールを瞬時に動かすには大型の磁石が必要になることと局所的に強い力がかかるのでモーターでゆっくり動かす方法にしました。
使用できる小型モーターは回転数が大きく,市販のギヤボックス注1を利用して回転数を下げます。

取付位置 転轍機構を取り付ける場所(=鈍端トングレールの位置)はアクリル板に薄型枕木を載せた部分と一致します。アクリル板は取付け台に も利用でき好都合です。レール間は狭いので転轍機構は細長く分散して載せます。

 

(2) 電気転轍機の製作

A モーターとギャーボックス

3Vのマグネットモーターが組み込まれたギャーボックス
注1が市販されていたので,これを使った「電気転轍機」が可能かどうかを検討しました。

サイズ,出力,ギャの強度,ギャ比など基本的なことを調べ,製品が想定している負荷よりもこの分岐器での負荷がずっと小さいことが分かりました。大部分がプラスチック 製なので耐久性が気になりますが他の点は問題がなさそうです。

このギャーボックスを野外で使用するためには防水対策が必要になります。また,
ギャの回転軸には軸方向に押し引きの力(=スラスト荷重)が作用するので,この力がギャにはたらかないようにする必要があります。

防雨・防水の対策

冬の雪や氷に没 して凍結すると壊れますが,夏の豪雨までは耐えられるようにします。
防水対策と言っても大袈裟なものでなく,ギャーボックスを真鍮製の箱に入れ,アルミ板の蓋をするだけです。必要があれば,強風対策もします。
この箱,回転を取り出すシャフト以外は水が侵入する穴が無く船の様に浮かせることが出来ます。
連続使用 するにはモーターの放熱が必要ですが,1回の使用が10秒弱なので発熱の心配は無いと思います。炎天下ではむしろ日除けなどが必要かもしれません。

写真:右上 箱の底のナットはギャーボックス取付用です。 横のアングルは枕木への取り付け用です。

 外側だけ塗装しました。輻射熱対策なら ばアルミの地金のままですが,汚れと鉄道らしさから黒色です。

スラスト荷重への対策

このギャーボックスは構造的に軸を回す向きの力(=ラジアル荷重)には耐えますが,回転軸方向の力(=スラスト荷重)は加えることが出来ません。

ネジを利用して回転運動を往復運動に変換すると,ネジを回す力よりもネジが進む向きの力の方が大きくなります。したがって,軸方向には強い押し引きの力(=スラスト荷重)が作用します。

軸方向の力を軸受け部分を中心にギャーボックス全体で受け止めるように,押し引きそれぞれの力に対応する2個の金具A(=セットカラー)を作ってはめ込みました。

右写真:ギャーボックスにはセットカラーが取り付けられるスペースが あったので,真鍮角棒と2mmネジでこの中に納まる大きさのセットカラーAを作りました。これでシャフト方向の力に対しては万全です。

 

回転運動を往復運動に

回転運動を直線運動に変えるために「ネジ式の変換器(右写真B)」を作りました。ピッチ1mmの6mmネジを使用して,1回転が1mmの直線運動に変わります。
トングレールの作動範囲が12mmなので12回転でレールの転轍が完了します。機械的なロスを見込むと実際は2回転位は余分に回すことになるかもしれません。

モーターの高速回転はギヤボックスで回転を落してもまだかなりの回転数です。使用条件で変わりますが,仮に製品注1の最高回転数(156÷60=) 2.6回/sとした場合,12mmの移動には4.6sかかります。
狭い線路をセカセカと走らせると「模型そのもの」になってしまいます。5sから10sをかけて転轍操作を行い,信号を確認してからおもむろに発車という「鉄道らしさ」を演出します。回転運動の変換に6mmのネジを使用することで転轍時間を5〜6秒にした理由です。

上写真:回転運動を往復運動に変える「変換器」です。右側の円筒部分を右回りに1回転させると,左側の円筒部分が1mm右側に引き寄せられます。材料はネジと真鍮パイプ,真鍮棒のみです。

C 転轍棒

転轍棒とレールの接合は連結板ではなく,トングレールの腹に転轍棒を直接通す昔の転轍機の構造です。
少し凝り過ぎてしまいましたが,転轍棒はレールの腹を左右のスプリングで挟みこんで動かします。
スプリング部分に腐食やゴミの付着を考えるとこの構造はオーバーだったと思います。バネの無い構造で十分です。

往復運動を転轍棒の向きに変えるアームCは腕が長いほどよいので注2,限度に近い50mmにしました。変換器Bからのシャフトが途中で変則的に曲がっているのはそのためです。
リンクは取付位置が微調整出来るように,すべてネジ止めにしました。

右写真:リンクの機構で 縦方向の動きを90°回転して横方向に転轍棒を動かします。転轍棒には真鍮丸棒で作ったセットカラーを嵌めてバネを挟みバネの中央にトングレールが入ります。
転轍棒に取り付けた白いアルミ角棒Dは左右に移動して2つのマイクロスイッチの入切を行います。(上図参照)

 

D モーターの作動停止

この電気転轍機の特徴は押しボタンスイッチさえ設ければ何ヶ所からでも転轍操作が出来ることで,この構造によって複数の分岐器を統括して転轍することも可能になります。(
分岐器の統括転轍については,別項に準備中です。)

モーターの回路は右図のようになります。スイッチを2個使っているのが特徴で押しボタンスイッチS1のONでモーターが回り始め,転轍が完了するとS2がOFFとなりモーターが停止します。
遠隔操作で転轍する場合も特別な回路を必要とせず,スイッチS1に並列にスイッチを増設するだけなので簡単です。

注:この回路だけではモーターが反転しません。 図では省略してありますが,電池の極性を反対にした同様の回路をモーターに接続します。

スイッチS2を分岐器に取り付けた状態は左図のようになります。
押しボタンS1を押し続けてトングレールが所定の位置まで移動するとマイクロスイッチS2がモーター電流を遮断します。 機構が複雑になるのを避けてS1に保持機能を付けませんから押しボタンから手を離すとその位置でトングレールが止まってしまうことが問題点です。注3
そこで転轍が完了したことを示す信号機を点灯させ,転轍の状態を確認します。

 

E‐F 可動クロッシング

可動クロッシングといっても5インチゲージと3インチ半ゲージのレールのクロッシングなのでレールを回転させるだけで可動クロッシングが実現します。注4

E
 往復運動するシャフトには弾性を利用出来る径3mmのステンレス棒を使用し,レールを回転させる腕の長さを変えられるようにしました。腕の長さによってレールの回転角と往復運動の振幅の関係を変える微調整をして最適な位置に固定します。
写真右  関節部の金具Eです。この金具だけで腕の長さとレールの回転角の関係を調整できます。

F 尖端トングレールが2本必要になる個所(参照逆位相で動くトングレールを1本の鈍端レールに置き換えて,可動クロッシングにするレールです。
センターピンを中心にレールをただ回転させるだけなので,2本のトングレールをスライドさせる構造よりもずっと楽に作れると思いましたが,こちらも意外に作り難いところがあります。

写真左
 レールを載せて回転する金具と枕木に取付けるためのT字形金具です。レールはネジ止めにし固定位置の調整をします。横に出た真鍮棒の先を上記,金具Eに挿してレールを回します。

 

1 タミヤ製:ハイパワーギャーボックスHE (サイズ28×60×53mm 最大軸出力,回転数 76.9mN・m 156r/min)

2 直線➔円弧➔直線と運動を変えるので円弧の半径が大きい方がよく,関節部のガタつきの影響も軽減します。

3 この問題は電磁石で瞬時に転轍すれば解決します。ただ,移動距離12mmを電磁石で動かすのは大変です。

4 クロッシング角が大きいので普通のクロッシングでも十分です。回転させる構造も面白いと思い作ってみました。

片開き分岐器  電気転轍機



組立 転轍制御